日本古来の入浴法を見直してみませんか?
いきなり硬い話からの始まりとなりますがお許しを。
農林水産省のとりまとめによると日本国内の柚子(ゆず)の生産量1位は高知県、続いて徳島県、愛媛県、宮崎県、大分県。
みかんの産地の順番は小中の社会科の授業でも散々習ったので、なんとなくみなさんの頭にも残っているかと思いますが、ゆずの産地はどうでしょうか?
私は先日たまたまこの5県が上位であること知りました。あ、いや再認識しました。
5県のうち高知、宮崎、大分の3県には友人も多く住んでおり時折遊びに寄らせて貰ったり、仕事でも訪れることがあるので行く先々でゆずを目にする機会が割と多かったのですが、産地や諸々のことについて深か堀りするまでには至りませんでした。
昨年たまたま大分で宿泊した宿で、女将の気遣いに触れることがあり、ゆずやゆず湯について時間が出来たら調べたりしてみたいな、と思っていました。
その日は冬至では無かったのですがとても寒い日で、大分から日帰りで福岡へ行き疲れて戻った私の部屋の内風呂に、女将がゆずを数個用意しておいて下さったのです。
この女性らしい気遣いをきっかけに、私はちょっと真面目にゆずとゆず湯についてお勉強をしてみましたのでご紹介させていただきます。
ゆず湯の由来
先人の知恵ってやはりとても素晴らしいですね。
日本では冬至(1年のうちで最も日照時間が短い日)に昔からかぼちゃを食すること、ゆず湯に入ることが良いと言い伝えられています。
冬至にゆず湯に浸かれば風邪をひかない、とも言われていますが、昔の人はゆずの細かな成分やその効能などを現代のように数値ではなく経験から知り、人々に言い伝えてきました。
ゆずそのものが中国から伝来したのは奈良時代か飛鳥の時代と言われていますが経路は定かではありません。
ただ伝来当時、ゆずは食用ではなく、薬用(食酢)として利用され栽培されていたとのことです。
ゆず湯の始まりは?
そのゆずをお湯に浮かべゆず湯とした始まりは江戸時代。
銭湯が客寄せのために冬至にゆずを入れたゆず湯が始まりです。
ちょっと予想外な?ゆず湯の始まりですよね。
さて、では湯に入る習慣そのものはどうだったのでしょうか?
実はこれが意外に新しく、江戸時代中期から始まった(広まった)と言われています。
江戸時代の少し前に江戸に銭湯ができ庶民にも銭湯が広まって行きましたが、その頃はまだ蒸し風呂でした。
(関西では五右衛門風呂が広がりつつあったようですが。)
奈良か飛鳥の時代に伝来し、薬用(食酢)として親しまれていたゆずを湯に浮かべそれに浸かるとは、なんとも画期的なアイデア!と思わずにはいられませんが、全盛期は江戸に600軒を超える銭湯がありました。
そのため銭湯が競って、客寄せ(集客率UP)の為に、当時で言うキャッチコピーに引っ掛けて始めたことなのです!驚きですよね。
冬至は湯治(とうじ)、ゆずは融通(ゆうずう)とかけた語呂合わせから、
『お湯に入って融通良く行きましょう。』
融通良く物事が行くことを願って、江戸っ子達はゆず湯に浸かっていたんですね。
[cc id=1168]ゆずの何がそんなにいいの?
始まりはキャッチコピーに引っ掛けて、と書きましたが、昔の人もゆず・ゆず湯の効能を体験して知っていたからこそ、現代にもその習慣はこうして生きて伝わっていると言うこと私も忘れていません。
ゆずにはビタミンCをはじめ、ビタミンA、カリウム、カルシウムなど多くの栄養素が含まれています。
このほかにクエン酸も豊富に含まれており、クエン酸は体内の代謝作用を促し、疲労回復効果があります。
ビタミンCの含有量は特に特記すべきだったので、五訂増補食品成分表を自らめくり主な果物の100g中の順位をまとめてみました。
ゆずの“皮”が含有量ダントツの1位です。そして果汁も10位。
レモンは果肉と果汁で150mgのところを、ゆずは皮と果汁で290mgです。
この数値は特別に高いことがまとめからもおわかりいただけるかと思いますが、皮ごとお風呂に入れるゆず湯の習慣は、本当に理にかなっていること納得できますね。
皮からも果汁からもビタミンCがたっぷりのゆず湯。
ビタミンCは肌の保水性を高め、抗酸化作用を促してくれます。そのことから乾燥肌の予防や老化予防が期待できます!
ただし、ゆずには柑橘類特有の「リモネン」という刺激成分が含まれるため、お肌の弱い方などはピリピリすることもありますのでご注意くださいね。
日本古来の入浴法ゆず湯、見直していただけましたでしょうか?
冬至以外にも、寒い日には、ちょっとお疲れの週末などに、数個浮かべて香りを楽しみながらゆっくり浸かりたいですね。
ライター:Luana